2556人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほんとうに、綺麗ですね…」
彼も立ち上がってこちらへ来る。
鼓動が、速くなる。
抱かれたら、どんなだろう…
この人に、触れられたら…
「…みたいだ」
「えっ?」
あまりにも鼓動が速くて、聞こえなかったのだ。
「今宵の月は、青葉みたいだと…
きりっとしていて、誰にも怯まない」
この人は、気が付いているのだろうか。
「清さん、それ、殺し文句」
「えっ…」
彼はまた顔を赤らめる。
「わっちは…清さんに…」
はあ、と大きなため息を吐く。
「抱かれたい」
言った瞬間、時が止まるかと思った。
彼は目を大きく見開いて、それからやさしい眼差しでわたしを包む。
「抱かれたいと思ったのは…初めて…」
月が二人をかすかに照らす。
「清さんだから…清さんだったから…」
もうあとは言葉にならない。涙が頬を伝う。
最初のコメントを投稿しよう!