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大阪…新町。
江戸・吉原、京都・祇園に並ぶ花街――――
今日も、やってくる。
私たちの、仕事。
毎晩毎晩違う男に抱かれていく、自分。
嫌だ、と感じていたのは、いつだったか…
遠い昔のような気がする。
甘い言葉…
甘い囁き…
私たちの手練手管に、男たちが溺れていく…
にやり、と口の端がつるのが判る。
なんだか男に仕返しでもしているようだ。
みんな、私に溺れてしまえ!
頭の中を、すべて私だけにしてしまえ!
そのためなら、私はどんなことでも叶えてあげる…
黒々とした感情が、徐々に私のなかに広がっていく。それは、同時に私の体を熱くし…
男を待ち、受け入れやすくするようになっていくのだ。
私は、この遊廓で一番好色な顔をしているだろうか?
待ちきれない、という顔になっているだろうか。
妓を探している男を見つめる…
衣紋を広く抜き、胸元を細い指で押さえる。
唇を濡らし、半開きに。
少し、舌を覗かせる…
にこり、と微笑めば。
たいていの男は、私に溺れてしまうのだ…
男を釣っておきながら、釣られた男を卑下し、心のなかでは罵っている私。
またその歪んだ想いが私をさらに好色に見えさせるのだ………
「行灯の灯を…あっちへやっておくれやす」
灯が奥へと…
それと同時に私の体じゅうを、汚れた舌が、這っていく…
「ああん……」
甘い声を出しながら、私は今日の客を頭の中で、殺すのだ。
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