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「わかるって…」
自分でも認識してないことを確認してくる若い客に少しいらつきを覚えながら酒を注ぐ。
ぴたっ…っと最後の一滴。
かむろに声をかけようとすると、後ろから抱き締められた。
「いい…」
しばらくの沈黙。
「俺も、あんたに殺されてぇな…」
若いのにすごい文句がでてくるもんだ。
「お望みどおりに、兄さん」
抱きすくめる手をとって、唇に当てる。ひんやりとしていて、気持ちがいい。
「なぁ」
冷ややかな笑顔で言う。
「おめえから…口吸いしてくれよ」
「…ふふっ」
少し濡れた髪に触れながら、唇を重ねる。かわいいこというじゃないか、この客は。
私は、口付けが好きだ。
この商売をしていて、一番好きなのがそれだ。
行為そのものより、一つになった気がする…
あ、こいつの口吸い、好きだ、と思う。
ひどく柔らかい。
若いやつは、噛み付くようにしてくるが…こいつは……
舌と舌が、溶けてしまいそうだ…
「……きれいだな、あんた」
思いもよらない言葉に、驚く。
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