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「あんたを見つけて、よかった」
耳元で囁く。
「俺は、強運の持ち主だ」
「だって、こんなに…」
「きれいだ」
「そんな声出さないでくれ、俺…」
「牡丹…」
彼の囁きを聴きながら眠りについた………
……朝。
鳥の声がする。
戸を少し、開けてみる。
晴れていた。
「晴れちゃった……か…」
雨の日の、泥の匂いはしない。
白粉の匂いも、薄れて…
彼の触れた部分を、指でなぞってみる。
びりっ…としたような、気がした。
「牡丹…」
呼ばれて振り向くと、彼はまだ布団、夢の中のようだ。
にこ、っと自然と笑顔になる。
「運がいいのか…悪いのか…わっちにはわかりゃせん…」
ちち、と雀の泣き声。
乱れた髪を少し整えると、布団に滑り込み、そっと口付けた………
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