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深い深い樹海の奥。湿気と静寂の中、僕はいる。
糸を張り巡らせ、罠にかかる餌を待つ。
糸が揺れた。
今日は漆黒の羽根が麗しい蝶。
僕は嬉しくて勢い良くそれに向かうと糸でぐるぐる巻きにしてやった。
美しい君もまるでもうミイラ。
気高い君にはお似合いかな。
こんな僕の何気ない毎日。
だけど、運命は残酷で邪魔者が現れる。物語には悪役が付き物さ。
そんな訳で僕の家も麗しの君もあっと言う間にめちゃくちゃ。
「おいっ、そこの人間!謝れよ」
地面に落ちた僕は愛の巣を壊した人間に一言物申した。
僕の言葉が奴に届かない事くらい分かっている。だけど、言わずにはいられないってのが男の性。
人間は生気なんてなく、どんどん奥へ進んで行く。
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