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 目が覚めるとそこは樹海の奥深く。  時が止まっているかのように動きのない世界。微かに差し込む光も淋しさを膨らませる。  私は今日、枯れ葉のような蛹〈サナギ〉から漆黒の羽根が輝く蝶になった。  幼虫だった頃は自分の姿にうんざり。だけど、今の私の辞書にはもう『劣等感』なんて言葉は存在しないわ。見るもの全てを魅了してみせる。私の美しさを存分に振りまいてあげるわ。  でもここは樹海。  生き物の姿が見当たらない。  少し飛んでみる事にした。  蚯蚓、蟻、蜥蜴…あれは…屍?  あら、わりとたくさんあるのね。 「あ…私だ」  腐り果て、一部白骨化した人間の死体が横たわっていた。近くには大量の薬の殻が散乱している。頭部から生えている泥まみれの長髪で辛うじて女性である事が分かる程、無惨な姿になっていた。
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