樹海の蜘蛛

蝶

　私、ここで自殺したの。
　生きるのが辛くて苦しくて樹海でひっそり死のうと…そして生まれ変わったら苦しみのない世界に行きたいと願ったの。
　その結果が『蝶』。
　まあ、いいわ。
　私は美しいもの。
　こんな醜い躯は私じゃない。
　私は自分の美しさを見せびらかす為、その場を離れた。
　しばらく飛ぶと人間の姿が目に入った。私は近付くとまわりをひらひらと舞ってみせる。
　でも人間は気付かない。
　いくら美しい羽根をちらちら羽ばたかせてもその姿は人間の目には映らない。
「ふん。あなたも『美』が分かるなら『死』なんて選ばないわね」
　そう一言、人間を見下すとまた飛び始めた。
　美しさを披露する為。
　しかし、何かがおかしい。
　急に羽根が動かなくなった。
　体は宙に浮いているのに。どうして？