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だから、惹かれたのかもしれない。
「……」
ああ……何だ。
私はもうちゃんと、知っていたんだ。
自分の気持ちを。
「睦樹先輩」
「ん?」
大学時代、同じクラスの男子に告白されたとき、どうしてもOKしてあげられなかった。
断る理由など、なかったはずなのに。
でも、今なら……どうして断ったのかわかる。
「私は……」
考えるまでもなく、自分の心は……別れたときからずっと、睦樹の元にあったから。
誰にも揺るがす事はできなかった。
それは、やっぱり私は彼を……。
「先輩がさっき公園で告白してくれましたよね?」
「したよ」
「そういえば、ちゃんと答えを返してませんでしたね」
「そうだっけ?思い切りフラれた記憶しかない」
「あれ、訂正します!!」
凜央は微笑んだ。
「先輩」
理由なんてわからない。
どうして彼を好きになったかなんて関係ない。
ただ、好きなのだから仕方ない。
私にはまだ、レンアイについて語れるような知識はないし、普通のレンアイなんてわからない。
でも……たぶん、これが恋なんだろう。
はっきりとは言えない。
でも、自分でどんな言葉を選んでも、これが一番しっくり来る言葉だった。
「私は、先輩のことが──」
いきなり唇で口を塞がれる。
ゆっくりと、睦樹はその唇を離した。
「こういうのは、男が言うもんでしょ?」
「あ……」
「凜央、愛してるよ」
「それは……知ってます」
高校時代から言われ続けた事。
「でも……今までで一番嬉しい──かもしれません」
「かもしれないって……」
睦樹は苦笑した。
「凜央」
何度も何度もその名前を呼ばれて来たが、ここまで違和感を感じない事は初めてだ。
最初は嫌で仕方なかったのに。
凜央は笑った。
「凜央」
再び名前を呼ばれ、口づけられる。
やっと、2人の時間が動き出す。
未来へ……繋がっていく……。
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