再会

4/12
前へ
/144ページ
次へ
「──」 心臓が止まるかと思った。 しかし、その心臓の鼓動は速くなるばかり。 「……」 凜央はケータイを閉じた。 このまま朝まで気づかないフリをすればいい。 そう。 朝まで私はこのメールに気が付かなかった。 それでいいだろう? 無論、凜央は行くつもりなどなかった。 仕事がある上に、電車がもうないかもしれない。 だからもうあの街には今日行く事はできない。 「……」 凜央は仕事に集中しようと頬を叩く。 「……バカ」 行きたがっている。 会いたがっている。 自分の中にある何かが、あの人に会いに行けと告げている。 「ああ、もう!!」 凜央は、終電に間に合うように急いで家を飛び出した。 「……」 少なくとも、あのメールを無視することは、凜央には不可能だった。 会って──帰るだけ。 それなら誰にも文句ないはずだ。 電車に揺られ、たどり着いた先でタクシーを拾おうとするが、生憎タクシーが捕まらない。 凜央は歩く事にした。 「……」 辺り一帯を静けさが包み、何かが出てくるのではないかと不安になる。 「あ……」 昔と同じ場所に「fairy&devil」はあった。 懐かしい。 ここにはよく世話になった。 「凜央ッ!!」 「?」 突然、声がした。 「──」 凜央はその相手を見て、動けなくなる。 「久しぶりだな」 「──睦樹……先輩」 「おかえり」 睦樹は凜央の手を握る。 「薄着すぎ。まだまだ寒いんだから、もっと厚着しないと」 「私を呼んだのは先輩でしょう?」 「もしかして、急いで来た?」 「……」 凜央は頷いた。 「ごめん、凜央。でも、来てくれてありがとう」 睦樹は、凜央の冷たくなった手を暖めるべく手を包んだ。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1800人が本棚に入れています
本棚に追加