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「約束守ってくれてありがとう」
「え?」
「覚えてない?俺が言った事」
「──あ」
確か、いつかこの街に戻ってきてくれというような内容だったはずだ。
「思い出した?」
「はい。でも、先輩が覚えていたとは意外です」
「そう?」
睦樹は苦笑した。
「あ。そういえば、これ」
「え?」
「凜央の食べてない種類だよ」
睦樹が渡したのは「fairy&devil」のケーキだった。
「あ、ありがとうございます」
「凜央、ここのケーキ大好きだもんね」
「はい♪」
凜央は、子どものような笑顔で、ケーキを見た。
「先輩、これ食べましょう」
凜央は近くにあったベンチまで睦樹を引っ張った。
「座ってください」
「あ、うん」
「先輩の分はこっちです」
「これ、凜央のために買ってきたんだけど……」
「いいんです!!久しぶりに先輩とケーキ食べたいと思いましたから。私の気分が変わる前に」
「ありがとう」
「何言ってるんですか。これ、先輩が買ったケーキですよ?」
微笑み、凜央はケーキを食べ始めた。
「……」
睦樹も黙って食べ始める。
「……」
凜央の幸せそうな顔を見ていると、睦樹まで幸せな気分になるのだった。
「さっきまで仕事してて、ちょうど甘いものが食べたかったんです」
凜央の可愛らしい笑顔。
「凜央、クリーム付いてる」
睦樹は笑い、頬に付いたクリームを舐め取る。
「先輩、私もう子どもじゃないですから!!」
「俺の事未だに睦樹先輩って呼んでるのは凜央くらいだよ。だからまだまだ子ども」
「どういう理屈ですか……?」
半ば呆れた凜央に、睦樹は微笑んで見せた。
「世界は俺中心で回ってるんだよ?」
そういえば、この人はとてもワガママだったと凜央は思い出す。
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