再会

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「何のつもりですか?」 「外、寒かっただろ?」 「そんなの……いりません」 「体調管理も仕事の一環だと思うけど?」 「え?」 「教師が風邪で生徒に風邪でも移したらいきなり教師やめさせられるかも」 「!!」 「言っとくけど、冗談のつもりで言ってるんじゃないんだよ?1つの小さなミスでも見落とせば、大きなミスに繋がる。全部の仕事に共通する事項だよ」 「……」 凜央はおとなしくミルクを飲んだ。 「凜央、言葉ってすごいよね」 「え?」 凜央は、睦樹を見た。 そこには微笑む睦樹がいる。 「俺も、弁護士やってて、言葉ってすごいなって、怖いなって思ったよ」 「──それは」 「言葉はいろんな感情を表せると同時に、凶器でもあるんだ。刃物よりも、銃よりも簡単に扱えて──しかも、一番タチが悪い」 「……」 「そのたった一言で、人間の運命を変えるんだからね。だから思うんだ。人間は、厄介だなって」 「?」 凜央には睦樹の言いたい事がよくわからなかった。 「言葉って暗示なんだよ?凜央が『私なんか』って言葉使うと、そういう人間になっちゃう。──だから、あんまり簡単にそんな事を言ってほしくない」 睦樹は凜央を抱きしめた。 「凜央は『私なんか』って言葉使わない方がいい。みんな、凜央が好きだから一緒にいるのに、それを否定しないであげて」 「──」 「凜央がそれだけの価値なら、俺が凜央の事好きになるわけないじゃん」 「あ……」 ゆっくりと睦樹が凜央から離れた。 「ごめん……なさい」 自分がたくさんの人に支えられている事にすら気づけなかった。 いや、気づこうとしていなかった。 「こっちこそ、ごめん。怒った所為で手、痛かったでしょ……」 睦樹はやっぱり昔から変わらない。
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