1801人が本棚に入れています
本棚に追加
/144ページ
そして放課後になり、生徒会室へ向かう。
「失礼します」
早く来すぎたのか、生徒会室内には、1人の黒髪の少年しかいなかった。
「学級委員長?」
「1年A組です」
「そう?俺がこの学校の生徒会長、黒沢睦樹。よろしく」
「よろしくお願いします」
この学校には似合わない──だから生徒会長をやっているのだろうが──まさに生徒会長という風格の少年だった。
「とりあえず、座って。もう少ししたらみんな来ると思うよ」
「はい」
長机2つをくっつけた机に、8つの椅子。
その中で凜央は、生徒会長から一番遠い席に座った。
「……何で一番遠い席?」
「私の予想では、この順序が正しいと思いました」
やっと原稿用紙1行を超えたという長さの言葉だった。
「順序?」
「あなたの次に生徒会副会長が2名。3年A組、3年B組2年A組、2年B組と続き、1年A組です」
「惜しいね」
「……1年のB組の椅子がないというのは些か気にかかりますが……」
「3年も2年も来ない。3年にも2年にも昨日の内に話はしてある。今日のメンツは、俺、副会長2人に、書記、会計1人ずつ──そして1年A組、B組の順だ。椅子が1つ余る計算になる」
「……そうですか」
別にどうでもいいと言うように、凜央は呟いた。
「名前は?」
「え?」
「これから学級委員長やるんでしょ?名前くらい覚えとかないと」
「……和田、凜央」
「凜央、ちゃんね」
「和田でお願いします」
「もしかして、下の名前で呼ばれるの、嫌い?」
「嫌い……じゃないです」
「じゃあ何で?」
「私に……この名前は似合いませんから」
「?」
「凜として、皆の中心になれるようにと付けられた名前なのですが、私には、その素質がありません」
「学級委員長してるのに?」
「学級委員長は……見た目で選ばれたも同然です。私と彼女たちの間に……信頼関係はありません」
「築こうとは思わないの?」
「……それは」
凜央は言葉に詰まった。
「築きたいのなら、築けばいい」
「え?」
「これからクラス替えがある間、1年間の間に」
そう言った生徒会長は、優しくも、強い瞳をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!