生徒会

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そして放課後になり、生徒会室へ向かう。 「失礼します」 早く来すぎたのか、生徒会室内には、1人の黒髪の少年しかいなかった。 「学級委員長?」 「1年A組です」 「そう?俺がこの学校の生徒会長、黒沢睦樹。よろしく」 「よろしくお願いします」 この学校には似合わない──だから生徒会長をやっているのだろうが──まさに生徒会長という風格の少年だった。 「とりあえず、座って。もう少ししたらみんな来ると思うよ」 「はい」 長机2つをくっつけた机に、8つの椅子。 その中で凜央は、生徒会長から一番遠い席に座った。 「……何で一番遠い席?」 「私の予想では、この順序が正しいと思いました」 やっと原稿用紙1行を超えたという長さの言葉だった。 「順序?」 「あなたの次に生徒会副会長が2名。3年A組、3年B組2年A組、2年B組と続き、1年A組です」 「惜しいね」 「……1年のB組の椅子がないというのは些か気にかかりますが……」 「3年も2年も来ない。3年にも2年にも昨日の内に話はしてある。今日のメンツは、俺、副会長2人に、書記、会計1人ずつ──そして1年A組、B組の順だ。椅子が1つ余る計算になる」 「……そうですか」 別にどうでもいいと言うように、凜央は呟いた。 「名前は?」 「え?」 「これから学級委員長やるんでしょ?名前くらい覚えとかないと」 「……和田、凜央」 「凜央、ちゃんね」 「和田でお願いします」 「もしかして、下の名前で呼ばれるの、嫌い?」 「嫌い……じゃないです」 「じゃあ何で?」 「私に……この名前は似合いませんから」 「?」 「凜として、皆の中心になれるようにと付けられた名前なのですが、私には、その素質がありません」 「学級委員長してるのに?」 「学級委員長は……見た目で選ばれたも同然です。私と彼女たちの間に……信頼関係はありません」 「築こうとは思わないの?」 「……それは」 凜央は言葉に詰まった。 「築きたいのなら、築けばいい」 「え?」 「これからクラス替えがある間、1年間の間に」 そう言った生徒会長は、優しくも、強い瞳をしていた。
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