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出来るだけ早く二階にある部屋に入って急いでドアを閉めると、制服も着替えずにそのままベッドに倒れ掛かり枕に顔を埋める。
凛寧には悪い事をしたと思ったが、彼は非常に頭がいい上、無口な分深くまで物事を考え整理する質なのでそれは心配いらない。
どうせこの程度で傷付いたりしないだろう。
付き合いも長いせいか、凛寧は本人よりも深く雪耶を知っていた。
元々捨て子であった雪耶を拾ったのは凛寧だった。
当時、僅か二歳程であった雪耶は覚えていないが、凛寧は幼少から出来が良かったので親と離れて暮らしていたらしい。
離れて暮らしていたといっても、事実上凛寧は親に捨てられたようなものだった。
だからとてもしっかりしていたし、見た目など物ともせずに雪耶は凛寧を頼る事ができた。
親がいない分兄に頼るのは当然の事だと思っていたが、彼に対する依存が強すぎると気付いたのは十歳の時だった。
級友との何気無い会話が原因ではあったのだが、その時は「弟だからって気安く凛寧に近付くな」とまで言われ、更には集団リンチに会い、肉体よりも精神的にひどく落ち込んだのを覚えている。
何日も部屋から出る事も出来ず、怯えて毎日を過ごしていたのを助けてくれたのだって凛寧だったのだ。
雪耶がちゃんと学校に行けるようになるまで、毎日部屋に来て頭を撫でたり抱き締めたり、優しく声を掛けたりしてくれた。
だからこそ、雪耶は自分に嫌気が差していた。
そもそも、雪耶がいじめにあったのは凛寧が原因であったというのに、彼は心から雪耶を心配したのだ。
慰められた上に、内面が子供だと思い知らされたのだ。
自分は一生、この人のようには、彼を含む兄達のようになる事は出来ない。
こんな近くにいるのに、とても遠い存在なのだと再認識させられたのだ。
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