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夕食の席で、当然兄弟達は雪耶の腕を心配した。
「雪耶くん、肩どうかしたんですか?」
最初にそう言ったのはあさとだった。
慌てたような声が頼りなさげだったが、とても心配そうだった。
「おまっ!それ外れてんじゃねーか!すぐに言わなきゃダメだろ!」
言いながら、愛人(あいと)が雪耶の肩に手を伸ばした。
「ったく、咲羅(さきら)処置手伝え」
愛人が咲羅を呼び寄せ、手早く雪耶の肩を診察させた。
「うん、骨に異常は無いみたいだけど雪ちゃん、一体どうしたの?」
愛人が雪耶の肩を手当てしている横で、咲羅が艶っぽい声で尋ねる。
「って、あら?こめかみのところも瘤になってるじゃないの、血が出てるわよ?」
その場にいたほぼ全員が心配そうに雪耶に注目する。
胡蓉も、一応は心配そうな振りをしている。
「えっと……部屋の模様替えをしようとしたら、本棚が倒れてきちゃって」
苦しい言い訳である。
帰ってきてすぐ凛寧に会わなければ、学校で怪我したとか、もっといい嘘も考えついたかもしれない。
「なるほど。で、本当はどうしたんです」
「緋那希(ひなき)兄さん、思っててもはっきり言っちゃダメだって」
冷徹な表情で尋ねる緋那希を、翡絮(ひわた)が笑いながらたしなめる。
「いいえ、妃河理兄さんは明後日まで帰ってきません。それまで私は貴方達の体調管理を怠る訳にはいかないのです」
憤然として緋那希が翡絮を睨み付ける。
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