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瞼が重い。
まるで縫い止められているみたいだ。
だけど、開かないことはない。
顔をしかめながら、ゆっくりと目を開ける。
そこは黒い世界だった。
どこまでも限りなく真っ黒な世界だが、自分の姿ははっきりと見える。
そして、不思議なことに前後左右どころか上下もわからない。
無重力ってやつか?
……いや、それも少し違う。
足の裏には何かがある。
それを踏み締めれば前に進めるし、坂道を歩くように上にも下にも行ける。
自分のイメージしたように移動できる。
「どこだ?ここ」
あの高さから落ちて助かる訳がない。
俺は確かに死んだはずだ。
それじゃあここが、あの世か?
しかし自分は存在している。
足もある。
四肢も何不自由なく動く。
頭から落ちたはずだが、思考回路も至って平常だ。
「やぁやぁやぁ!
ようこそ!
いらっしゃい!
こんにちは!」
どこからともなく、陽気でふざけているような感じの声が聞こえてきた。
「誰だ!?」
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