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社会人に憧れていた事は紛れもない事実だった。子供が意味もなく、何となく『大人』に憧れるのとそれは似ていた。
けど実際の所、思い描いていた社会人像と現実はかけ離れていた。もっとスーツをカッコ良く着こなし、スマートに仕事をこなす。少なくとも、毎日満員電車に揺られ、挙げ句痴漢に間違われるような社会人は想像していなかった。
さらに言うと、まさか自分が五月病にかかるなんて、それこそ想像とはかけ離れていた。
けど、事実なのだからしょうがない。社会人一ヶ月目で、とうとう僕は仕事と言う恋人と倦怠期を迎えてしまったのだ。なんとも情けない。
会社に近いこともあり、最寄り駅より徒歩15分の所にある川沿いのアパートに僕は住んでいた。1Kタイプの洋室。南向きで、ベランダの先はすぐ川があって開けた景色を一望できた。都会とは言えどそれなりに癒される景色で、僕は密かに気に入っていた。プライベートや仕事で何かあった時は、たいていベランダへ出てタバコを吸いながら景色を眺めて心を癒やした。
社会人歴一ヶ月。五月病を発症。そんな時、僕は彼女に出会った。
これは、そんな僕の不思議な恋の話だ。
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