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「じゃあ、あまり長く付き合わせちゃったら迷惑よね」
「そんなこと無いさ。すごく楽しかった」
「ええ。私も」
静音の言葉は微笑んでいた。俺は言った。
「明日、もしかしたら、またベランダで星を眺めてるかも」
静音はクスリと笑った。
「私も、もしかしたら洗濯物を取り込んでいるかも」
今度は僕がクスリと笑った。すると静音は「けど」と続けた。
「明日はあなたの顔を見て話がしたい」
「じゃあ」
と僕は続けた。
「僕は今、君の顔を知りたい」
静音が「良いわ」と言ったので、僕はベランダから隣の部屋を覗き込んだ。静音も同様にこちらを覗き込んだ。僕は、静音と目があった。
月明かりに照らされた静音の顔は、仄かに白く輝いていた。全体的に線が細く、とても綺麗な顔立ちをしていた。暗くてよくは見えないが、栗色に染まったストレートのロングヘアーが似合う、名前の通り静かそうな人だった。
しばらく見とれていると、静音は小さく微笑んだ。想像以上に優しい笑顔だった。
「じゃあ、また明日ね」
「うん。また明日」
お互い部屋に戻って、僕はそのままベッドに横になった。
その夜はなかなか寝付けなかった。けどなんとなく、明日は仕事を頑張ろう、と思った。静音の微笑みで、僕の引きこもり生活は終止符を打った。
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