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重くのし掛かるような空
鳥の声だけがやけにうるさく響き渡っていた
夕方かと思うほどの薄暗い道を 一人 また一人と足早に歩いていく
早朝6時半
近くの駅に向かう通勤通学の人々である
そんな姿をただじっと窓越しに見つめている 一人の少年がいた
今年小学5学生になったばかりの
武田健治である
健治は病気だった
母からはすぐによくなるからと病名は知らされず
入院生活も小3の時から 早2年が過ぎようとしていた
普段は割と元気だったが たまにお腹が痛むのと
熱が出た時に点滴があるのが
苦痛だった
そんな健治の唯一の楽しみが
物語を作ること
それはどこにでもあるような日常の物語の中に
とても不思議なファンタジーが加わっていた
物語の世界は
病院と窓から見える小さな街並み
そしていつも目にする人々が主人公であった
それは健治が生きていくために必要な
唯一の支えだったのかもしれない
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