プロローグ

2/3
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
   重くのし掛かるような空  鳥の声だけがやけにうるさく響き渡っていた  夕方かと思うほどの薄暗い道を 一人 また一人と足早に歩いていく  早朝6時半  近くの駅に向かう通勤通学の人々である  そんな姿をただじっと窓越しに見つめている 一人の少年がいた  今年小学5学生になったばかりの  武田健治である  健治は病気だった  母からはすぐによくなるからと病名は知らされず  入院生活も小3の時から 早2年が過ぎようとしていた  普段は割と元気だったが たまにお腹が痛むのと  熱が出た時に点滴があるのが  苦痛だった  そんな健治の唯一の楽しみが  物語を作ること  それはどこにでもあるような日常の物語の中に  とても不思議なファンタジーが加わっていた  物語の世界は  病院と窓から見える小さな街並み  そしていつも目にする人々が主人公であった  それは健治が生きていくために必要な  唯一の支えだったのかもしれない  
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!