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「お~い、ミチル~、カケル~!あ~そ~ぼぉ~!」
裏庭から甲高く無邪気な声が響いた。分家の跡取り娘・弦がまた本家へ忍び込んだようだ。
本家と分家は対立しているが、従兄同士の彼らはそんな大人の争いをまったく気にしてなどいなかった。
「弦、こっちだ!父さんは留守だから隠れなくていいぞ」
はぁ~い、と近づいてくる返事と同調してじわじわ迫ってくる冷気。
「あぁもう!弦ってば、また裏口開けっ放しのままなのかな…」
注意しようとした翔が奥の間の襖に手をかける間際、向こう側から勢いよく開け放たれた。
「うわぁぁ!!」
そこには従妹の弦と一緒に真っ白なスーツ姿の女が!
「あ、あのさ、弦?これは…」
「お客さん、門の前にいたから、連れてきてあげたの~♪ユヅル、エライ?」
満面の笑みで兄弟に戯れつく幼女。その後ろで微笑む雪のように白く美しい女。
「加藤直人と言う方を探して頂きたいのです」
背後から包みこまれるような冷えびえする空気の中、兄弟は氷ってしまった煎茶を持ったまま肩を落とした。
「マジかよ…」
今年の冬も昨年同様、記録的な大寒波にみまわれてしまうだろうと、気象庁に忠告してしまいたくなった兄弟だった。
兄弟の物語はまだまだこれからも続いていく。
夜空の月を眺める時に、彼らのその後の活躍を思い描いてもらえたら幸いです。
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