書籍版・冒頭

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 彼女は月代分家の跡取り娘・弦。本家と分家の対立なんて、この子供たちには関係ない大人の世界の問題だった。 「ねぇ!いつものアレで遊ぼ!いいでしょ?」  子猫のようにすり寄って甘える幼女。兄弟は顔を見合わせ、ため息をついた。  …はいはい、観念しましたよ。 「弦、やっても良いけど、一回だけだからね。遊び終わったらおとなしく帰るんだよ」 「はい!」 「この遊びは絶対誰にも内緒だぞ!ここに出入りしてること以上の騒ぎになるし、かなりキツい仕置きをされるからな」 「はい!」  解っているのか、全然気にしていないのか、弦はいつも返事だけは優等生だ。兄弟は目配せして、それぞれ部屋の外の様子をうかがう。
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