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一
広大で俗世間から隔絶されたような空気をまとう月代一族本家の庭園に、ちらちらと雪が舞い落ちる。
後から後から降り続く白い綿ぼうしに、本家当主の式神たちが戯れついていた。捕まえても瞬く間に崩れて消える儚い結晶を逃がすまいと、手のひら大の小さな身体で飛びまわって懸命に追い回している。
その微笑ましい光景を、奥の間から妖しく美しい双子の少年が見つめている。
「翔、お前の娘たちはトロいなぁ~ほら、また転んだぞ」
快活に笑う少年が、もうひとりの少年の肩を叩いた。
「何言ってるの?満の息子たちの方が泥だらけじゃない、格好悪いよ」
そう言いながら、反論するように先に笑った少年の肩を叩き返した。
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