牡丹雪

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        二 月代家には独特の空気がある。 勘の鋭い人ならことさら実感してしまう、ぞくりとする清らかで張りつめた霊気。 でも、今日はその霊気のせいばかりではなく、足元からじりじり痺れるような冷気にも包まれていた。 「西野智也と言う方を探して頂きたいのです」 白いスーツの訪問者は思いつめた顔で、対峙する月代本家当主の兄弟に切り出した。寒さでうまく言葉の出ない兄弟は顔を合わせ、真っ白い煙のようなため息を吐いた。 嫌な予感が的中したのだ。 訪問者は雪女、ある人を探すため、北国よりはるばる月代家を頼って来ていた。古来より、雪女が人里まで降りて姿を見せてまで行動する理由はひとつ…恋煩いだ。
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