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強い風にあおられて、一面の桜が散った。
通学路を少し脇にそれた川沿いに、見事な桜並木がある。
時期になると、毎日のように寄り道した。
晴れの日も、雨の日も、ひとりで歩く桜並木の道。
桜が好きだった。
ずっと、見上げて歩いていた。
母と手をつないで歩いた日を、ときどき思い出しながら。
ひとりで見上げても、桜の花はきれいだ。
いつかの日と同じ、優しい色をしている。
「とっおこちゃあーん!」
後ろから大きな声が追いかけてきて、振り返る。
短くした茶色っぽい癖っ毛に、大きな目、まだ肌寒いのに、ショートパンツにスニーカーで元気に駆けてくる妹が笑った。頭の上で大きく手を振って、ランドセルを反対の手で振りまわしている。
近所でも、クラスでも、妹に勝てる男の子はひとりも居ないという。
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