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「――!」
水底から急上昇したように、景色がぐらりと歪んで視界が開けた。
こぼれおちそうなほど見開いた目に、雨雲と針葉樹が映る。
喉がつまって、一瞬、呼吸が出来なくなる。
自分の足下が確かなのか、分からない。
ここは……【私】は……。
胸に手を当てて、意識的に深呼吸をする。苦しいときは息を吸おうとしてしまうけれど、大事なのはまず吐くことだ。ゆっくりと深く息を吐き出しながら、乾きはじめた目を閉じた。こちらも、意識的にまたたきを繰り返す。
こんな風に意識が飛ぶことは、最近めっきり減っていたのに。
やっと落ち着いてきた呼吸を緩めて、辺りを見回した。
山の中に居る。
ひとりだ。
【彼】が、居ない。
吐息の色が白いことにやっと気が付いて、一気に冷えを思い出した。コートとマフラーで守られている以外の露出した肌に空気が突き刺さる。
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