01:【私】 

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   どうしてみんなには見えないのだろう、と思っていた。  瞼を一度閉じて開いた裏側の世界。薄い幕をそうっと捲った向こう側。  そちらの世界には、あらゆる雑多なものが暮らしている。  たとえば、ひとに『幽霊』と呼ばれるもの。  たとえば、ひとに『妖怪』と呼ばれるもの。  たとえば、ひとに『精霊』と呼ばれるもの。  色々な呼ばれ方をされるけれど、裏の世界においてそれらに区別はなく、【私】にとってもそうだった。  それらは人間の姿をしていたり、動物の姿をしていたりする。  それらはきらきらした光の集まりだったり、真っ黒い影だったりもする。  そしてそれらは、【私】に時々話しかけてくる。直接、心に『声』が響くこともあれば、耳に「音」が届くこともある。
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