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とうこ、と彼らは【私】を呼ぶ。
名乗ったわけでもないのに知っている。【私】も、彼らのことを知っている。
裏側の世界では、いつも【私】は彼らと共に在り、彼らに囲まれて生きていた。
それだけのことだった。
でも、【私】は人間だ。表側の世界で生まれ、暮らす生き物だ。
【私】が裏側をのぞくとき、体はいつも表側の世界に置かれている。裏側まで行けるのは、心だけだった。
【私】は、裏側では暮らして行けない。
間宮藤子という人間である限り、表側の世界に立っているのだから。
【私】はほんの時々、そのことが苦しかった。
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