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「先生、乙女をからかわないで下さいよ」
なんだかちょっと不自然とも思えるくらいの笑顔で、あたしは先生に軽く言い返した。
「そうだね」
「そうですよ」
そう言った時にはもう先生は『教師』の顔で、なんだかホッと肩の力が抜けていく。
「じゃあ、帰ります」
カバンを手にぺこりと頭を下げて、あたしは何事もなかったように先生の横を通り過ぎようとした。
「いのち短し、恋せよ少女(おとめ)」
「え……っ?」
先生とすれ違ったその瞬間に。
あんまり自然に、あんまり小さく呟いた先生の言葉の意味がわからなくて。
あたしは振り返ってまじまじと先生を見つめてしまった。
先生の瞳は今度は笑ってなくて。
あたしは何故かその瞳から目を逸らせずに。
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