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「じゃあな、気をつけて帰るんだぞ」
優しく言うんだけど、どこか感じる違和感。
あたしには後輩のスタンスの悠人が、ミカちゃんには先輩な態度で接してるから?
ううん、それとも違う。
上手く説明できないけど。
どうしたんだろう、なんだか悠人らしくない。
「……はい。また明日、悠人先輩」
「またな。で、メイ先輩。欲しい本って? 小説?」
何も言えなくなって寂しそうに俯いて返事をするミカちゃんに背を向けてあたしに話しかける悠人は、もう振り返ろうともしなかった。
あ……これか。
いつも相手に境界線なんか微塵も感じさせないはずの悠人なのに。
ミカちゃんにはキッパリと線を引くのが見えた気がした。
この見えない境界線が違和感の正体だ。
なんだかあたしの知ってる悠人じゃなくて、まるで別人みたい。
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