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  「ごめん悠人、お待たせ」  いつもと同じように、なにも気づかなかったように、あたしは笑う。  そう、今までなんにも気づかなかったんだ。  悠人も気づかせないようにしてた。  だから。  あたしはこの3ヶ月。  悠人のいったい何を見てきたんだろう。 「そっちは大丈夫? 忙しそうなのにゴメン」 「うん、大丈夫よ。どうかした?」  悠人が教室に来るのは珍しいことじゃなかったけど、何か用がなければ来ない。 「今日ミーティングだけで早く終われそうなんだ。だから、一緒に帰れる? って。お伺い」 「わかった。待ってるわね」 「じゃあ、終わったら呼びに来る」  嬉しそうな顔しちゃって。  さっきの表情がまるで見間違いみたいに――。  
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