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   あ、まずったかな。  高橋はバスケ部のエースで今でこそセンターなんてやってる花形選手だけど、1年のまだ補欠時代から密かにキャーキャー言われる存在だった。  それがなんでかあたしなんかと付き合っちゃって。  当時あたしは、よくヤキモチを妬いたもんだ。 「メイに言われなくてもね」  あたしの作った一瞬の気まずい空気を吹き払うように、ピンッと遙香はあたしの額にきつめのデコピンを見舞った。 「いっ…たぁ」  そして、あたしの大げさ過ぎる痛がりように遙香がコロコロと笑顔を見せたから、あたしはようやく安心した。 「なんだ、悪巧みか?」 「高橋。違うわよ、地獄耳ね」 「オレの噂かよ」  高橋がニヤリと笑う。 「別に……今日、悠人と帰るから遙香1人にしちゃってゴメンね。って話」  こんなんでも、一応あたしを心配してくれてるんだとわかるから、さり気なく伝える。  
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