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   もちろん、遥香のそんな気持ちはあたしにだって痛いくらいにわかる。  恋をしたら一喜一憂。  些細な仕草で上がったり。  何気ないたった一言で急に落ちたり。  とにかく感情が忙しいんだ。  それこそ心臓に毛でも生えてなきゃ無事ではいられない。 「どっちが先かなぁ」  とりあえず、どうでもいいようなネタでこの場の妙な緊張感を紛らわせてみる。 「高橋くん! じゃなかったら残されて1人で待つとか、無理だわ」  どっちかと言えば、あたしもその方がいいかな。  鉢合わせだけは遠慮したい。  なんとなく。  不意にあの冷たい瞳が甦(よみがえ)る。  あの視線の正体を、知りたいような。  知ってしまいたくないような……。  どっちが正解なのか、一番それが知りたいのかもしれない。  
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