14人が本棚に入れています
本棚に追加
――
「……んちょー」
遠くから響いてくる声を華麗に聞き流し、狐うどんを啜る。
最近増設されたカフェに人が集中し、その反面どこか寂寥感の漂う学食。
しかしそんな事はどうでも良く、此処の麺類は……ただただ旨い。
「いんちょ、あのね!」
気温、湿度、水質硬度……あらゆる要素から算出して茹でる麺はまさに絶品。
食堂のおばちゃん、実は昔どこかの研究員だったそうな。
「いんちょ、聞いてるの?」
あらかた麺を胃に納めたので、ようやく声に反応する。
「また出たって」
「何が?」
「旧校舎の放送」
「それは良いけど、何故僕に?」
全く以て、意味が判らない。
この後輩は、そんなことを話すために走って叫んで……
「だって先輩、放送いんちょだから」
「関係ないよ」
放送委員長だからといって、管轄外に首を突っ込む気は毛頭無い。
ましてや、狐うどんに集中すべき時間帯に、そんなことを考える気すら起きない。
「ああ、来たついでに言っておくけど、来週キミ放送当番ね」
後輩は頬を膨らませ、幾分か温度の下がった目で睨む。
「いんちょ、仕事「だけ」は完璧ですね」
「まあね」
揶揄に対して、少し得意気に応える。
そう
僕は、職務に忠実だ
最初のコメントを投稿しよう!