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「やっぱり、今話題の旧校舎の放送ぐらいじゃないとね」
またこの話だ。
これだけ噂が浸透しているとあっては、正直気に掛けなくもない。
だけど
「僕は放送委員長といえど、管轄外の職務は放棄していますので」
お姉さまは、優雅に微笑む。
「だから「いんちょ」なのよ?
可愛げの無い性格を少しでも良くしてあげようって、皆が。
ま、その頑なさも充分可愛いけれど」
七不思議と思っていたのは、全校生徒による壮大なイジメだった。
「イジメじゃないわ。愛情表現よ」
どちらにせよ、不快である事実は曲げようもない。
そんな表現を露骨に浮かべようモノなら
「呼んじゃ……ダメ?」
なんて言われるワケで、たとえオカマと言えど断り切れないだけの力を行使される。
「勝手にしてください」
「やった」
投げ遣りな放任も肯定されたと取られるのは、釈然としない。
しかしこの状況下では、話を続るということは弄ばれ続けると同義なので、早々に切り上げたいという願望が込み上げてくる。
「委員会の仕事があるので……」
「ダウト」
「さすがお姉さま」
心臓を形どる記号が付随されそうな返答に棒読みで対応しつつ、心の中で軽く舌打ちをする。
「いんちょさんの仕事ぐらい、把握してるわよ。
でも……それが判ってて引き止めるのも嫌なヤツよね。
いいわ。放課後にまた呼びにくるから、その時に話しましょう」
ひらひらと手を振りながら優雅に去りゆく後ろ姿を眺め、拒否するタイミングを完全に逃してしまったことを悔やむ。
……
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