a whispering history

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陰欝な気分を満喫しつつ、まったりと授業の準備をしていたら、隣から声。   「なあ……いんちょとお姉さまって、デキてるの?」   「ゴプァ゛ッ」   突然のクラスメイトの言葉に、飲んでいたリアルゴールドが間違った方向に迸った。   「羨ましいぜ」   「いや、そもそもあの御方はオカ……」   「ニューハーフだ、訂正しろ!」   狂信的とも言えるクラスメイトは、噛み付く勢いで……実際に噛み付かれて痛い。   「でも、心的な障害とかじゃないんだっけ?」   聞いたことがある。性同一性なんたらかんたら……   「ああ、単なる女装癖だそうだ」   それであの完璧な容姿、洗練された動作。 ありゃ世界の女を敵に回してもおかしくない。 いや、女性からも求愛されているらしいが……   「え、何の話?」   クラスの女子が、ギュルンと高速で首から振り向く。   「ってかお姉さまの話してたよね。だよね。ってか絶対してた。これは加われっていう、言わば天恵だよね。そうだよね? あ、いんちょ……お姉さま獲ったら許さないんだから! 見たよ見た見た絶対見た! いんちょとお姉さまが楽しそうに話してたの。顔にすっと手なんか添えられちゃって」   「……」   もうイヤ。   「そういやお姉さまって、普通に男子トイレ入るよな。滅多に無いけど。 出くわした日にゃあ、中で用を足してた全員が小便を手に引っ掛けるからなぁ。 ああ、懍々しく優雅なお姿だった」   クラスメイトは、遠い目をする。   「…………」   もう嫌ぁ!
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