序章:私の孤独と事件の発端。

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   体を起こすと、頬を通って冷たいものが落ちる。   「涙……?」    そういえばいつの日か、母親と二人で暮らしていた……。    物心がついた時にはもう、二人暮らし。父親がいなかった。    父親など居ないものだと思ってた……。      ……寂しぃ。      最近ずっとこの夢にうなされて、夜中に起きてしまう。    きっと、寂しさがそうさせているのだろう。    その証拠に、この涙なのだから―――。      運命なのかな、―――いや、そんなはずない。ではなぜ私はこんな寂しさに毎日うなされるの……?      そんな考えを巡らすが、結局答えは見つからないんだけど……。    インスタントコーヒーを煎れながら、苦笑を浮かべる。    砂糖は少なめ、ミルクを適量に、手慣れた手付きで混ぜ合わせて一口飲んでみる。    「やっぱりこの味かな」    椅子に腰掛けて、一息吐く。
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