🍁告白🍁

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▼ 翌日。 四時限目の終わった教室は、これから昼食ということもあり、一時(いっとき)の開放感とざわめきに溢れている。 食堂や購買へ駆けていく者、雑談をしながら弁当を取り出す者、ダイエット中と宣言したばかりに、皆の食事を恨めしそうに見つめている者など、反応は様々だ。 私と澪は、予めコンビニで購入しておいた菓子パンを片手に、今日は天気がいいので屋上でも行こうかと相談していた。 そんな騒がしい教室が、突然水を打ったように静まり返る。 「ほえ……どしたの?」 「さあ…?」 急な変化に、首を傾げる私たち。 周囲を見回してみれば、弁当組も食堂へ行こうとしていた組も、ダイエット組すら動きを止めて、入り口の方を見つめている。 何事かと思い、彼らに倣ってそちら側へ視線を向ける。 ―――と。 「わ…誰、あのめちゃめちゃカッコイいヒト……」 そこには、サラサラな茶髪に穏やかな顔つきの男子生徒が一人、教室を覗き込んでいた。 瞬時に顔が熱くなり、心臓が激しすぎる鼓動を開始する。 「ねぇ…アレ、三年生の沢口先輩じゃない?」 誰かが呟く。 そう、あの優しそうな表情を見間違える筈もない。 私の憧れの人物である、沢口先輩その人だった。 「ぅわ、実物初めて見たよ…モデルみたい…」 「ファンクラブとかもあるらしいよ?ウチのクラスの岡田とか実島とか、アイツらも会員だって言ってた…」 「成績も学年トップとか」 「性格も優しいみたいだよ~?」 ひそひそと囁きが交わされる。 やはり、見た目も中身も完璧超人だけあって、我がクラスの女子たちからも人気が高いようだ。 むむ…分かってたけど、なんか面白くない。 「に、二年生の教室に、何の用かな?」 自然と声が上擦ってしまう。 そして、そんな私の反応を決して見逃さない友人。 「さあ~?実は後輩に彼女がいたんぜよ、的な展開になるんじゃないのぉ?あ、こりゃピンチだペチャパイ紅葉!!」 「黙りなさい爆乳ツインテール」 茶化す澪の鳩尾に拳を叩き込みながら、しかし僅かな不安に陥る。 「てゆうか、ホントだったらどうしてくれんのよ…」
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