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翌日。
四時限目の終わった教室は、これから昼食ということもあり、一時(いっとき)の開放感とざわめきに溢れている。
食堂や購買へ駆けていく者、雑談をしながら弁当を取り出す者、ダイエット中と宣言したばかりに、皆の食事を恨めしそうに見つめている者など、反応は様々だ。
私と澪は、予めコンビニで購入しておいた菓子パンを片手に、今日は天気がいいので屋上でも行こうかと相談していた。
そんな騒がしい教室が、突然水を打ったように静まり返る。
「ほえ……どしたの?」
「さあ…?」
急な変化に、首を傾げる私たち。
周囲を見回してみれば、弁当組も食堂へ行こうとしていた組も、ダイエット組すら動きを止めて、入り口の方を見つめている。
何事かと思い、彼らに倣ってそちら側へ視線を向ける。
―――と。
「わ…誰、あのめちゃめちゃカッコイいヒト……」
そこには、サラサラな茶髪に穏やかな顔つきの男子生徒が一人、教室を覗き込んでいた。
瞬時に顔が熱くなり、心臓が激しすぎる鼓動を開始する。
「ねぇ…アレ、三年生の沢口先輩じゃない?」
誰かが呟く。
そう、あの優しそうな表情を見間違える筈もない。
私の憧れの人物である、沢口先輩その人だった。
「ぅわ、実物初めて見たよ…モデルみたい…」
「ファンクラブとかもあるらしいよ?ウチのクラスの岡田とか実島とか、アイツらも会員だって言ってた…」
「成績も学年トップとか」
「性格も優しいみたいだよ~?」
ひそひそと囁きが交わされる。
やはり、見た目も中身も完璧超人だけあって、我がクラスの女子たちからも人気が高いようだ。
むむ…分かってたけど、なんか面白くない。
「に、二年生の教室に、何の用かな?」
自然と声が上擦ってしまう。
そして、そんな私の反応を決して見逃さない友人。
「さあ~?実は後輩に彼女がいたんぜよ、的な展開になるんじゃないのぉ?あ、こりゃピンチだペチャパイ紅葉!!」
「黙りなさい爆乳ツインテール」
茶化す澪の鳩尾に拳を叩き込みながら、しかし僅かな不安に陥る。
「てゆうか、ホントだったらどうしてくれんのよ…」
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