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「九重…」
ジッと見つめられる。
普段より真剣な雰囲気の漂う先輩の姿に、私はいっそうドギマギしてしまう。
うわぁ…先輩の顔がこんな近くに……近くに……って、あれ?
沢口先輩の顔が、鼻と鼻が触れ合うほど接近している。
ちょっと、まさかコレって―――
「っ!?」
気づいた時には、沢口先輩の唇が、私のモノに重ねられていた。
―――な、ななな!?
一瞬、遂に妄想が爆発して幻覚でも見ているのかと思った。
こりゃ末期だな…あはは。
そう自分を誤魔化してみたが、押し当てられた柔らかい唇の感触は、やはり本物である。
ちょ、私…先輩とキスしちゃってる!?
沢口先輩の顔が離れる。
再び目を開き、そして、真っ直ぐに私を見据え―――
「お前が好きだ、九重」
いつものハッキリとした口調で、そう告げた。
……すき?
すき、スキ、スキー、スキヤキー。
マテ、落ち着け私。
冷静になれ、心を静めよ。
…………。
……よし、落ち着いた。
で、すき……好き?
誰が?
先輩が。
誰を?
私を。
なぁんだ、あはははは……………………は?
「…えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
驚きのあまり、喉の奥から叫び声が噴射する。
聞き間違い!?聞き間違いですか!?
今沢口先輩が私のコト好きって言ったようにキコエタンデスケド!?
思わず後ずさる私……の肩を、沢口先輩にギュッとつかまれる。
「ずっと、好きだったんだ……俺の彼女に……俺のモノになってくれ!!」
後頭部を、殺害専用の釘バットで殴りつけられた気がした。
先輩の言葉を脳内で慎重に噛み砕き、分析し、今度こそ理解する。
つまり、私がずっと憧れていた沢口先輩は、私のコトが好きで、今まさに告白されていて……私の、答えを…待っている?
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