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「鼻潰れた?余計ブスんなったんじゃない?あ、ゴメン、それ以上は無理かぁ~」
鼓膜を揺さぶる、忌々しい猿の鳴き声。
振り返れば、単細胞生物に相応しい面をしたモノが、私を指差してケタケタと笑っている。
その行動が、態度が、顔が、髪が、ピアスが、化粧が、存在そのものが。
私を嘲っているようで、堪らなく不愉快。
吐き気がする。
私…こんな下等生物に、なんでやられっぱなしになってるの?
身体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。
我慢する必要なんて、ないじゃない。
口元に薄ら笑いを浮かべつつも、私が近づいてくることに、戸惑いの色を見せる佐藤。
そんな彼女の横っ面を、握りしめた左手の拳で、私は力いっぱい殴りつけた。
「きゃ!?」
ガタァン、と。
衝撃をモロに受け、椅子ごと床に倒れ込む佐藤。いや、サル。
右頬を押さえ、何が起きたのか理解できないのか、目を白黒させている。
隣にあった椅子をつかみ取り、思い切り振りかぶる。
「ひ…、ひい……」
手を突き出して、怯えるように後ずさるサル。
ふん‥ようやく、反撃を受けていることに気づいたか、低知能。
私の予想外の行動に、教室中が息を呑んで、この光景に見入っている。
あはは。
まさに下克上の絵だね、これ。
「ちょ、やめてよ、待っ――――――」
許しを請うサルの頭へ、容赦なく椅子を振り下ろす。
鉄の脚が、染め上げた気持ち悪い金髪の頭を強打する。
悲鳴を上げながら、悶えるサル。
その姿はひどく滑稽で、私は思わず笑いを漏らしてしまった。
溜まりに溜まっていたものが、凄まじい奔流となって一斉に溢れだしてくる。
ストッパーの壊れたような、歯止めの効かなくなった…それでいて妙に爽快な気分。
要するに、私はブチ切れているわけだ。
再び椅子を振り上げ、叩きつける。
何度も、何度も、何度も。
床を転がって悲鳴を上げ続ける佐藤が本当に惨めで、可笑しくて。
私は単調だが楽しい作業を、延々と繰り返す。
驚いて入ってきた担任に止められるまで、私は怒りに身を任せ、その行為を楽しみ続けた。
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