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私……此処にいてもいいのかな…?
存在そのものを否定され続け、自らを追い詰めるような疑念まで抱いてしまう。
佐藤に暴力を振るってしまった今、これからは余計陰湿なイジメに切り替わるに違いない。
更に、好きだったハズの先輩は自分の欲望にしか興味のない、最低の人間だった。
苦悩の連鎖に、私の精神は相当参っていた。
「…はあ………」
人気のない、ガランとした教室。
数十分前に帰りのHRは終了し、どこかへ寄り道するだの今日の部活の練習メニューは何だのと喋りながら、各々が去った後。
掃除用具入れから数枚の雑巾と、大掃除の時にしか使わない粉洗剤の箱を掃除用具入れから取り出した私は、机の落書きを消そうと躍起になっていた。
だが、洗剤の性能が悪いのか油性ペンの頑固さゆえか、三十分近く続けてもなお、文字が消えることはなかった。
まるで、切り刻まれた刻印のように。
そんな作業を繰り返しながら、私の頭の中では、今朝の疑問が渦巻いていた。
「佐藤やクラスのみんなは、本当に私を恨んでいるのかしら…?」
行き過ぎた嫌がらせ、クラスメート全員によるシカト、身に覚えのない広まった噂。ずっと、不思議に思っていた。
明らかに、私へ対して深い恨みを持っているゆえの犯行。
大量の人間に協力させ、影でコソコソと実行する、陰湿で狡猾なやり方。
どう考えても、あの低知能の佐藤に、そんな小賢しい智恵があるとは思えない。
そもそも、佐藤を慕うのは取り巻きの女子十人程度で、大半の生徒はアイツを嫌っていた。
にも拘わらず、彼らの協力的な態度とシカトの徹底っぷり。
単に巻き込まれたくないという気持ちからではなく、誰かのために協力しているような…‥そんな感じがした。
つまり、佐藤以外の誰かに。
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