🍁発覚🍁

7/16
140人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
でも、一体だれが…? ―――――と、そのとき。 教室の扉が、唐突に「ガラリ」と開いた。 視線を向けると、そこには見覚えのある男子生徒が一人、こちらの様子を伺うように立っていた。 艶のある黒髪に、大人しそうな表情。 背はあまり高くなく、私と同じくらいだろうか? 自分に言えたことではないが、正直目立たないタイプの人間。 確か、名前は……… 「……ええと…紺野、君?」 そうだ、紺野直之とかいう名前だ。 「あ、うん。名前、覚えてくれてたんだ九重さん」 私の呼びかけに、紺野君は穏やかな、しかしやや緊張した笑みを浮かべた。 …なんだか、久しぶりに他人と会話を交わした気がする。 「…私に、なにか用?」 「え…あ、うん」 廊下や教室内に、キョロキョロと視線を走らせながら、緊張気味に答える紺野君。 少々挙動不審ではあるが、別に私を嫌っている様子ではない。 どちらかと言えば、クラスの嫌われ者と会話しているところを他人に見られたくない……そんな感じだ。 いや、実際そうなんだろう。 周囲に誰もいないことを確認すると、落ち着きのない足取りで、こちらへ近づいてきた。 「ひどいね…」 落書きだらけの机に視線を落としながら、他人事のように呟く。 まあ実際他人事だから、仕方なくはあるんだけど。 「…ふぅん。同情してくれるんだ?」 「え?」 「いや、クラス集団で私をシカトしてたから、てっきり紺野君も私を嫌ってたんじゃないか、って。気にしてくれるんだ?」 「あ…その、ごめん……」 申し訳なさそうに、頭を下げる紺野君。 ちょっと意外。 「いいよ、別に。自分だけみんなと違う態度とるのはできないだろうし。で、何か用事?」 …少しばかり、トゲのある言い方になってしまった。 だが、気にしていないのか気づいていないのか、特に意に介した様子もなく頷く。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!