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◆【interlude】◆
十並駅から電車を乗り継ぐこと一時間、最寄りの駅から歩くこと更に二十分。
遺濱市(ゆいはまし)という街の約四割を占める、大規模な陸軍基地の正門前。
そこに、ガードマンたちの訝しげな視線を浴びながら佇む、銀髪の少女の姿があった。
「ふはぅ……そろそろマフラーが欲しい季節ですね~」
のんびりした口調で独りごちる彼女。
年の頃は十八才前後、身を包むのは山吹色のブレザーと赤いチェックのスカート。その服装から、学生であることが見て取れる。
陸軍基地周辺に居ることが、この上なく似つかわしくない。
おまけに、こうして彼女が此処を訪れてから、かれこれ三十分以上が経過しているのだ。
周囲にこの基地以外の場所はないため、ガードマンたちが不思議がるのも無理はないだろう。
そんな風に彼らが疑問を抱く中、いつの間にか彼女の背後に、一人の男が姿を現していた。
「…待たせてしまったようだな戸山天螺、………いや、ここでは“ガブリエル”と呼ぶべきか」
銀髪の少女へ親しげに声をかける男は、彼らのよく知る顔だった。
詳しい事情は知らされていないが、お偉いさんの招待客であるらしく、これまで幾度となくこの基地を訪れたことのある人間だ。
「この寒空の下、私がどんだけ待ったと思ってやがるんですか~?レディの扱い方くらい、知っとけなんですよ~」
「妻や家族を捨てた私に、そんなモノを求められても困る」
「………相変わらず自己中さんですね~、九重博士は」
少女の声に、男―――――九重蘆木(ここのえ よしき)は、しわだらけの白衣を羽織り直しながら対応する。
「愚痴ならば研究室でいくらでも聞こう。一先ず、中に入らないか?例のアレも見せたい」
「むむぅ…博士の解説は長ったらしいから、ハッキリ言ってウゼーんですけどね~」
ガードマンたちの存在を完全に無視し、堂々と正門横の事務所をくぐり抜ける二人組。
女子高生と研究者の組み合わせという、陸軍基地には有り得ない光景に、ガードマンの男は改めて首を傾げながら、去っていく彼らの背中を眺めていた。
◆【interlude out】◆
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