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「なんで…、澪、なんでなの…」
人当たりの良さそうな顔つき、小柄な体型、左右に結った黒髪。
片手に持ったゴミ袋の中身を、私のげた箱に詰め込んでいる彼女は、紛れもなく私の友人の澪だった。
彼女が手にしているのは、空き缶を拾う時などに使う、銀色の鋏のようなもの。
それに挟み取られていた落ち葉や紙パックが、ボトボトと床の上に落ちる。
澪は、少しだけ驚いたような表情を浮かべると、
「あーあ、バレちゃった」
いつもと何ら変わらない口調で、残念そうに微笑んだ。
「わざわざ待ち伏せしてたんだ?…誰に聞いた……かは、この際どうでもいっか。その様子だと、他の嫌がらせの主犯が私だってコト、知ってるみたいだね」
諦めたように、ペロリと舌を出す。
全く悪びれた様子もなく、あっさりと犯行を認める澪。
否定や言い訳をしてくれた方が、まだ嬉しかったかもしれない。
『矢野さんが、九重さんのげた箱に何かを詰め込んでたんだ。教科書や体操服の悪戯も、全部矢野さんの仕業だよ』
それが先ほど、紺野君から聞いた真相だった。
「じゃあ佐藤たちは……」
「うん、私が頼んだ。元々アイツら紅葉を嫌ってたから、簡単に引き受けてくれたよ?あ、でも百足やノート破ったり体操着や机に落書きしたりとか、そーゆーのは全部私だけどね」
開き直ったのか、それとも隠す気などさらさらないのか。澪はやけに饒舌だった。
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