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彼女の発言によって、今まで抱いていた様々な疑問の欠片が、パズルのピースのように次々と一致していく。
何故、大方の人間に嫌われている筈の佐藤にみんなが協力し、嫌がらせを見て見ぬ振りしていたのか。
何故、あからさまな嘘の噂を、澪は信じていたのか。
いや…そもそも澪にしか話していない情報が、どうしてこんなにも早く全体に知れ渡っていたのか。
少し考えてみれば解ることだった。
このイジメの黒幕が澪であるから……それで、全て合点がいく。
「どうして…?私、澪に何かした?アンタに恨まれるようなコト、何かした…?」
全く身に覚えがない。
ほんの数日前までは普通の友達同士だったのに…。
「……ま、今更隠してもしょうがないか」
そんな私の質問に、澪は再び微笑を浮かべながら答える。
微かに自嘲を含んだ笑み。
澪は、ゆっくりと口を開き―――
「私、妊娠してるんだ。…誰の子かは………言わなくても解るでしょ?このお腹の中には赤ちゃんが………………沢口先輩の子どもがいるんだよ…」
衝撃の事実を、告げた。
頭の中が、真っ白になる。
目を閉じ、優しくお腹を撫でる澪の姿が、酷く現実味のない光景に見える。
ちょっと…それ、どういうこと…?
二人ってそんな関係だったの?
でも、沢口先輩は私の事が好きだって……先輩はそのこと知らないの?待て、それ以前に妊娠て……
頭の中がぐちゃぐちゃ。
思考が纏まらない。
澪の言葉が、正確に理解できない。
「紅葉は知らなかったかもしれないけど、私と沢口先輩はずっと前から付き合ってたの。水泳部に入部して、割とすぐだったかな?紅葉と同じように、突然告白されてね……」
遠くを見るような瞳で、澪は語り始める。
私は何も言うことができず、ただ呆然と澪の話を聞いていた。
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