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「嬉しかったよ。私の色んな部分を誉めてくれて、求めてくれて、何度も好きって囁いてくれた。何回も愛し合って、セックスして………すごく幸せだった。先月赤ちゃんができたって知った時はホント、嬉し泣きしちゃったもん」
だが、そこで澪の表情は一変する。
「そんな矢先だった……いきなり、先輩に別れようって言われたの。何でって問い詰めたら『他に好きな人ができた』って。妊娠したコト教えたら、じゃあ堕ろせだなんて言うんだよ?
………あんまりじゃない?散々私を求めて、妊娠させておいて……それで好きな人ができたからって、あっさり捨てられちゃったんだよ、私」
澪の肩はブルブルと震え、瞳にはいつしか涙が滲んでいた。
掠れた声で、それでも澪は続ける。
「もちろん恨んだよ………最初は先輩を殺しちゃおうかと思った。………………でも…出来なかった。だって私、やっぱり沢口先輩のコト好きなんだもん」
全然知らなかった。
そもそも、澪も沢口先輩も、そんな素振りは見せなかった。
二人が一緒にいるところだって、ほとんど目にした記憶がない。
「それじゃあ、その…沢口先輩の好きだった人って……」
そんなの訊ねるまでもない、私だ。
私のせいで、澪は………
「先輩の告白を受け入れたから……だから澪は、そんな事をしてるの…?」
落ち葉などが詰まった、透明のゴミ袋を見つめる。
ならば、仕方ないのかもしれない。
私さえいなければ、澪は沢口先輩と――――――
「……許せなかったのは、それだけじゃ………ううん。それだけなら、紅葉を恨んだりはしなかった。屋上で先輩が紅葉に告白しているのを聞いたときはショックだったけど、紅葉は私の友達だったから」
「え…?」
じゃあ、何がいけないの?
そう訊ねようとしたが、先ほどとは打って変わった鋭い視線に射抜かれ、思わず口を閉ざしてしまう。
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