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「私が頭にきたのは、先輩の彼女としての自覚のなさ!!先輩と帰る約束を忘れたり、一緒に居ても全然楽しそうにしてなかったり………私が欲しかったヒトを手に入れておいて、ちっとも幸せそうにしない紅葉の態度だよ!!」
……なるほど。
確かにそうかもしれない。
事実、私は先輩と一緒にいて、楽しいと思えた記憶がない。
喪失感に苛まされていただけだ。
おまけに、先日私を所有物宣言した上に、私の気持ちなどお構いなしときた。
だが澪にとって、沢口先輩を手に入れた私の姿はとても羨ましく、そして妬ましく映っていに違いない。
澪からすれば、自分がどんなに願っても二度と手に入らない物を簡単に手に入れ、しかしどうでもよい顔をしていた私は、相当憎らしい女だったのだろう。
あんな最低の男とは言え、澪には掛け替えのない存在なのだ。
それなら――――――
「じゃあ私、別れる」
「……え?」
困惑の声を上げ、赤く泣きはらした目で見つめる澪に、私は告げる。
初めから、こうすれば良かったんだ。
「沢口先輩と別れる、思いっ切りフってやる。そうすればきっと、澪の所へ戻ってくるでしょ?」
そうすれば、全部元通りになる。佐藤たちのイジメも、クラスメートたちの態度も、……そして、私と澪の関係も。
「……いい、の……紅葉……?」
呆気に取られたように、私の名を呼ぶ澪。
彼女の瞳に、希望の光が宿る。
それが、私はとても嬉しくて、
「それに私、沢口先輩のコト全然好きじゃないから。むしろこっちから願い下げ。だから澪、もう一度私と友達に―――――――――――」
こんな言葉を、口走ってしまったのかもしれない。
気づくと、私は頬を張り飛ばされていた。
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