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「…いた、…え……?」
唾液に、鉄の味が混じる。
口内のどこかが切れたらしい。
だが、そんなことより―――――
「…………けないで」
憤怒の色を浮かべ、私を睨みつける澪の姿に動揺した。
「ふざけないでよ!!別に好きじゃない?じゃあ何で先輩の告白を受け入れたのよ!?そんなヤツのせいで私は捨てられたの!?」
しまった、と思った時には、もう後の祭りだった。
ゴミ袋の中身を、次々と投げつけられる。
「ちがっ…違うの澪、そうじゃなくて―――」
「気に入らない気に入らない気に入らない!アンタのせいで私は……私は………!………アンタなんか居なければよかったんだ!この世から消えればいい!!」
『消えろ』
机や黒板に幾度となく書かれ、私の心に刻まれた最も残酷な暴言。
それを、澪の口から直接言われたという事実が、私の胸を深く抉る。
泣き叫びながらゴミ袋を叩きつけ、昇降口を飛び出していく澪。
そんな彼女に声を掛ける事はおろか、手を伸ばそうともしなかった。
「…み…、お…………」
もう後戻りはできないと。
もう二度と、澪との仲を取り戻せないと、理解してしまって。
私は放心したように、小さくなっていく彼女の背中を、ただ見つめていることしかできなかった………。
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