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「…冗談じゃないわ……ホントに…」
授業中の静かな廊下を、私は重い足取りで進みながらぼやく。
5時限目の開始直前、水浸しにされた自分の座席を拭いていた私は、突然現れた教頭によって職員室に呼び出された。
何者かによって割られた校長室の窓ガラス。その犯人が、何故か私の仕業だとされていたのだ。
どうやら澪が、私が実行しているのを目撃したなどと証言したらしい。
「……どこまで私を貶めれば気が済むのよ…」
結局、誤解を解くのに三十分近くの時間を浪費してしまった。
終わることのない、陰湿な嫌がらせの数々。
ここ数日、まともに眠れた気がしない。
澪たちの仕打ちに、私の精神は疲れきっていた。
睡眠不足もあってか意識がハッキリとせず、気づくといつの間にか教室の前まで辿り着いていた。
「そういえば…机に鞄、置きっぱなしだ…」
また中身を引きずり出されてるのかしら…?
昨日新しいのに買い換えたばかりなのに……まいったな。
そんな憂鬱な気持ちでドアを開け、足を踏み入れた…………瞬間。
私は、言葉を失った。
―――私の席が、……ない?
一瞬、教室を間違えたのかと思った。
けれど違う。
授業を受けている彼らの姿は、私をシカトするクラスメートたち。
紛れもなく、ここは二年三組の教室。
机のあった筈の場所には、私の鞄が一つ、寂しく床に投げ捨てられている。
まるで、そのまま消滅してしまったかのように、机と椅子は姿を消していた。
どうしていいか解らず立ち尽くす私に、クラスメートはおろか教壇に立つ先生すら、視線を向けようとはしない。
誰かに片付けられた私の席。
早く帰れと言わんばかりに放り出された鞄。
私など、初めからいなかったかのように扱うみんなの態度。
「あはは……、なんだ、そういうコト…?もう此処にいるなって…私に消えろって、そう言いたいわけね…」
応える者は、勿論いない。
はは。
なら、早く消えなくちゃ。
もう此処に、私の居場所は存在しないんだから……。
私は踵を返し、教室を飛び出した。
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