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その言葉に嘘は感じられず、あくまで純粋に私を心配してくれているのが伝わってきた。
ココアの温かさのせいだろうか。
紺野君の言葉は、とても心地の良いものに聞こえた。
「それに僕は……九重さんが学校で虐められたりしても、助けてあげることすらできない臆病者なんだ。九重さんの気持ちなんて、勝手な解釈でしか理解できない」
彼の表情は穏やかで、沢口先輩のように“良いところを見せよう”とか“オマエの気持ちはよく分かる”などの善人ぶりは微塵もない。
所詮他人事だから、そんな考えなだけなのかもしれない。
「自分が虐められたくないから、いつだって見て見ぬ振りしちゃうんだ。だから、こんな事くらいしかしてあげられない」
手元の缶に視線を向ける。
コレのことだろう。
つまり…こっそりと励ますくらいしか、できないと。そう言っているのだ。
……でも。
たとえそんな小さな優しさだとしても―――
「ただ、これだけは知っておいて欲しいんだ。僕は九重さんを庇ってあげられないヘタレだけど……キミを護る、なんてカッコイい台詞は言えないけど。………一応、九重さんの味方でいるつもりだから」
それでも…私を気遣ってくれる人が…、私の存在を許してくれる人がいて。
控えめではあるけれど、ちゃんと私を見てくれていた人がいることを知って。
私は独りぼっちじゃないと、理解できたから。
だから………それが本当に嬉しくて。
気づくと、目頭が熱くなっていた。
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