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◆【interlude】◆
―――――三日前。
機械仕掛けの空間。
この部屋の特徴を簡潔に言い表すならば、それが最も適しているだろう。
天井、壁、床。
上下左右にはパイプ管や液晶画面、複雑に絡み合ったコードなどが一面に張り巡らされ、四方八方から常時電子音のようなモノが聞き取れる。
エデン第三研究所。
そう呼ばれるこの研究室には、現在、会話を交わす二人の男女の姿があった。
「以上が現時点での完成状況だ。数値で表せば、せいぜい60パーセントといったところか」
男……九重蘆木は、複雑な文字の羅列を映し出したコンピューターの画面から視線を外す。
白衣の裾を翻し、どこか得意気な表情で、背後にいる銀髪の少女へ向き直った。
「まさかここまで順調に進むとは思わなかった。基盤の心臓を早々に入手してくれた君のおかげだ…“ガブリエル”」
蘆木は誉めているものの、実際に成果を上げたのは自分である……とでも言いたげな口振りだった。
“ガブリエル”と呼ばれた少女……戸山天螺は、それを正確に感じ取ったのか、別段喜びを示さずに質問を返す。
「んなことはどうでもいいんです~。結局、コイツを発動させるには何が必要なのか、さっさと教えやがるんですよ~」
口調こそ穏やかだが、彼女は内心、相当の苛立ちを募らせていた。
無理もないだろう。
貴重な時間を割いてわざわざ足を運んだというのに、本来の用事とはほぼ無関係……少なくとも自身には全く必要のない解説を、一時間以上も延々と聞かされたのだから。
「たまには聞く方の身にもなれなんです~」
「ふむ…?……少しばかり説明不足なのだが……まあ構わないか、本題に入るとしよう」
ようやくそれが通じたのか、或いはあえて無視していたのか、その真意は定かではないが。蘆木は軽く咳払いをすると、ゆっくりと説明を始める。
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