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ベッド脇のライトが、小さなホテルの一室を薄暗く照らし出す。
マットの床には、私の脱ぎ散らかしたブレザーやスカートが転がり、隣にはキチンと折り畳まれた彼の制服があった。
「…本当に、いいの……九重さん…?」
そんな部屋の中央に設置されたベッドの上。下着姿で座る私へ、紺野君は不安そうに尋ねてくる。
こんなときまで遠慮がちな彼の態度に、思わず僅かな微笑が漏れる。
私は無言で頷きながら下着を剥ぎ取り、一糸まとわぬ姿になる。ちっとも膨らみのない胸が露わになった。
「……慰めて…お願いだから」
懇願しながら、困惑する紺野君に、自分から唇を重ねる。
不安や恐れといった感情はない。思考が麻痺し、自分がどんな行為をしようとしているのか…そんな恥ずかしさも感じない。
溢れ出してくるこの気持ちの正体が掴めない。しかし、全く気にならない。
もう、何もかもがどうでもよかった。
今はただ、優しく抱きしめて欲しかった。慰めて欲しかった。
…ボロボロになった私の心を、とにかく癒やして欲しかった。
「……ちゅ……んっ…ふ…」
「…ン、…ぅ……く…」
激しく、互いの舌を貪るように吸い付き、舐めまわす。寂しくて悲しい気持ちを紛らわすために、強く、強く。
一方的な感情をぶつけているだけ。
その自覚はあるものの、それを押し止めるだけの理性はない。
そんな私の気持ちに応えようと、懸命に抱きしめてくれる紺野君。
それが、私の存在を認めてくれているようで。それがとても嬉しくて。不覚にも、また瞳から涙が零れ落ちた。
唇を離す。
互いの間に引かれた、唾液の糸が光る。
「………九…のえ、さん…」
「いいから…。お願いだから、最後までして欲しいの……」
控えめに覆い被さってくる紺野君を、私の方から抱き寄せるようにして受け入れる。
全てから見捨てられた自分を見てくれる、唯一の味方。
優しい彼の温もりに、心が癒されていくのを感じながら、私は幸せな気持ちで目を瞑った…。
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